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Secret space
第14章 番外 後編
どさどさと 雪が滑り落ちる音が背後から木霊して、
雅斗はその音のほうへ少し振り返ってみた。

荒い息は吐いた端から白い霧となって消える。
急な斜面の上、雪が足に絡みつくので、思うように前に進めなかった。
決して足の捕われ転ぶことの無いよう、一歩一歩 慎重に足を進める。
軽い早織の体重は、次第に重さを感じ始め、体力はどんどん奪われていった。
しかし歩みを止めることはしない。

地に降り積もった雪は 純真無垢な白さを強調して輝いてはいるが、
その下に何を隠し持っているか分からない。

今のように、木が重さに耐えかねて、突然 大音量をあげ雪を振るい落とす音以外
山は しんとした寒気に包まれて、自分の 雪を掻き分ける足音と、荒い呼吸音以外
何も聞こえてはこなかった。
背中に負ぶった早織が きちんと呼吸をしているか、時折酷く気にはかかったが
肩から首元に、しっかりと絡んで抱きついてくる腕と 背中に染み込んでくる温かな体温がそれを否定した。

白い雪は依然降り続いている。

ベッドの上にあったショールを引っ掛けさせて良かったと思った。
頭から被れば雪除けのフードの代わりになる。
雅斗自身は鬱陶しく顔に掛かってくる雪に対して 時折首を振っては払いながら、
道の在るかも分からない困難な山の斜面を、只管に前へと進んだ。

一度だけ、けほんと小さく 背中の早織が咳をした。
寒さが身を引き裂く。帰ろうという提案は決して受け入れられなかった。
余りにも無謀だが、行くしかない。それが望みであるのなら。

険しい山の道のりは、果てしなく続くように思えた。
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