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第14章 番外 後編
「お前、泣いているのか?」


抑え切れず一瞬漏れた 嗚咽の声を聞き取って、
雅斗は気だるそうに実和に振り向いて言った。


「姉がいずれ死ぬのという事は、既に分かっていたことだ。
 少し早まったというだけ。
 何を今更、悲しむ?」


雅斗は抑揚のない声でそう呟いた。

 私には分かる。
 どんなに平静を装っても、
 慟哭を内に秘めた人間がどんな眼をするか。

 形のない心があげる悲鳴のままに 叫びたい衝動を飲み込んで、
 過ごした夜に見つめていた 鏡の中の自分の瞳で知ってる。

実和ははっきりと言葉を返した。


「貴方様も悲しんでいらっしゃいます」


「悲しむ?俺が?」


「そうです。
 何故声に出してお泣きにならないのです?」


くっくと 雅斗は皮肉るような微笑を返した。


「泣きなどしない。泣いたところで何の意味がある」


「ありますわ。本当に少しかも知れませんが、気が晴れます。

 押さえ込んで胸の奥で磨り潰しても酷くなるだけ・・・
 そんなことではいつまでも楽になりませんわ!」


実和は自分にも苛立つように声をあげた。

 理由は無い。
 意味が無くとも激情を涙に流せば楽になる。
 優しい欺瞞的な疲労が、裂ける身体を包んでくれる。
 胸の痛みを少しだけ 水と声に換えて吐き出せる。

 そんなふうにひっそりと自分にさえも触れぬよう、内に切々と溜めていては 
 悲しみが胸に錆び付いて 剥がれず心が腐っていく。


雅斗の肩が、流し込まれた激情で 微かに震えるのを見た気がした。


「楽になどならない!

 俺は決して 永遠に 楽になどなりはしない」


一瞬、端整な顔が痛切に歪んだ。
実和は雅斗がついに泣き出すのだと思った。
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