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Secret space
第14章 番外 後編
しかしすぐに、もとの感情の欠いた顔に戻った。
冷徹な表情は能面のように、全てを封じ込めて揺らぐこともない。
ただ聡明な黒い瞳に映る光がその奥で細かに震えていた。
後にも先にも実和は、
全ての激情を含みながら、全ての感情を断ち切っている
あんなに静かで哀しい声を 聞いたことがない。
「俺が 殺したのだから。 姉の 命も 俺が 奪った」
「雅斗様!!!」
喉元が引き攣る程叫んでその名を呼ぶと、
実和は堪らなくなって、雅斗を胸に抱きとめた。
悲痛に眉根を寄せて、ぐっと伏せた眼から 止め処なくぼろぼろと雫が零れ落ち始めた。
涙を持たないこの少年のために 自分が泣いているのだと思った。
どうすればその胸を貫く暗く巨大な空洞を埋めることが出来るのか。
例え一瞬でも彼を 陰惨と身を潰すような自縛から解き放つ方法は無いのか。
実和は答えの分からぬまま、闇雲に溢れて欲情を煽動させる自分の抱擁に
ただじっと動かずに、無言で受け止める少年を胸にかき抱いた。
「どうしてなのです?!!どうしてそのような!!!」
迸る激情の波が
ありとあらゆる場所から飛沫をあげて噴き出して
もつれ合う二人の周りに、轟々と渦を巻くようだった。
一度それに身を投げ込むと、
自分の醜い身体の形も 鬩ぎあう感情の有無さえも 全て打ち消されてしまう気がした。
冷徹な表情は能面のように、全てを封じ込めて揺らぐこともない。
ただ聡明な黒い瞳に映る光がその奥で細かに震えていた。
後にも先にも実和は、
全ての激情を含みながら、全ての感情を断ち切っている
あんなに静かで哀しい声を 聞いたことがない。
「俺が 殺したのだから。 姉の 命も 俺が 奪った」
「雅斗様!!!」
喉元が引き攣る程叫んでその名を呼ぶと、
実和は堪らなくなって、雅斗を胸に抱きとめた。
悲痛に眉根を寄せて、ぐっと伏せた眼から 止め処なくぼろぼろと雫が零れ落ち始めた。
涙を持たないこの少年のために 自分が泣いているのだと思った。
どうすればその胸を貫く暗く巨大な空洞を埋めることが出来るのか。
例え一瞬でも彼を 陰惨と身を潰すような自縛から解き放つ方法は無いのか。
実和は答えの分からぬまま、闇雲に溢れて欲情を煽動させる自分の抱擁に
ただじっと動かずに、無言で受け止める少年を胸にかき抱いた。
「どうしてなのです?!!どうしてそのような!!!」
迸る激情の波が
ありとあらゆる場所から飛沫をあげて噴き出して
もつれ合う二人の周りに、轟々と渦を巻くようだった。
一度それに身を投げ込むと、
自分の醜い身体の形も 鬩ぎあう感情の有無さえも 全て打ち消されてしまう気がした。