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Secret space
第15章 連続四夜 第一夜
紗織は、行為の最中、
男が動いて躍動すると時折、ぱたぱたと落ちて、
自分を濡らした雫を思い出した。


『ええ?・・・じゃあ・・・ あれって・・・
 汗 じゃなくて、涙・・ だったの??』


紗織は眉根を寄せて考え込んていると、
男は すっと手を上げて自分の眼窩に触れ
指先に付着した透明な液体を、しげしげと見つめて言った。


「泣く状態とは・・ ・・・妙な気分だ。
 お前はこんなふうによく泣けたものだな」


その言葉を聞いて、
紗織は堪えきれず、くすくすと笑い出す。
それを見て 男は不機嫌そうに 僅かに眉を吊り上げた。


「ごめん だって、何か変なんだもの」


紗織が泣きながら というのは茶飯事ではあったが、
男が泣きながら というのは想像し返すだけでも 何だか可笑しい。


「もう、泣かなくたっていいのに」


口元に柔らかく笑みを浮かべて紗織は言った。
男が少し考えるように言葉を返した。


「俺は泣き慣れてないのでな。 止め方を知らない。
 どうすれば止まる?」


「どうすればって・・・」


紗織は男の胸に顔を押し付けて 声を押し殺しながらも
肩を震わせてくっくと笑った。


「もー ・・・だめ。可笑しい! 変だよー、そんなの・・・」


ひとしきり吹きだしていたが、細められた男の目線に気付くと 紗織は笑い声を抑えた。
自分のあの言葉の驚くべき効果に、目を瞠りながらも無性に嬉しい気さえした。
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