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第16章 連続四夜 第二夜
「まさか、また泣けとでも言うのでは無いだろうな・・・」


男は、分け入ろうとしていた手を 
名残惜しげにまだ皮膚の上を撫でるように這わせながら離して
傍らに すとんと仰向けになると、目を細めて横の紗織を見やる。


「あ、 ・・あれはちょっと言い過ぎだった・・」


何故か罪悪感のようなものが胸に広がってしまう。

目を伏せ俯いた紗織の顔の顎を掴んで引きあげさせると、
男は口付けを繰り返した。

温かな手が頬を覆って包みこむ。
そのまま髪に触れられる。
続いて唇がすべるように降りて、唇に届くと少し吸われて、また上っていく。

場所を変え、断続的に押し付けられる 男の薄い唇の形を
紗織は瞼の裏側から見ている気がした。


「はっ・・・ ふぅ・・ 」


身体の機能が鈍ってもなお 敏感な耳元に、男の生温かな吐息がかかると、
紗織は肩をすくめて溜息を漏らした。


「ひゃっ ・・・んっ ・」


続いて押し寄せた ぬるりとした感触に驚いて、嬌声が飛び出る。
男の舌先が、今日初めて紗織に触れた場所は、
音を吸い込む穴の傍らの 小さく盛り上がる耳の突起だった。

無防備なもう片方の耳にも
男の指先がぐるぐるとなぞって、時に軽く入り込む。


「は・・・・ あ・・・ はっ ・・ぅわ」


紗織が耳が弱いのを男は勿論知っていて、周密に責め立ててくる。
ざわざわくちゅくちゅと 神経を逆撫でる音だけは、鼓膜をも通過して
どこまでも奥に入り込む。
両側から紗織を貫いて 繋ぎあって、交差して抜ける。
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