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Secret space
第3章 3
促されるままに部屋を移動すると、また促されるままに用意された朝食を何となく食べ、
食事が済むとまた、美しい女中の後ろをついて歩いて
日の差す板張りの廊下を素足で踏みしめながら移動した。
次に通された部屋は、庭に面した板張りの部屋だった。
座り心地の良い大きな揺り椅子のひとつに腰掛け、
手入れの行き届いた、まるで京都のどこかの寺にあるような広い日本庭園を無感情に眺めた。
昼食と言われればまた食べて、
通された同じ部屋でまたぼんやりとしていた。
何時の間にか橙色に染まった空を眺めて、自分の図太さにちょっと笑った。
いったい自分はここで何をしているのだろう。
帰りたいとは思わなかった。
あの美人の女中に、
「お帰りになりますか?」
と問われれば、
「はい」
と答えただろう。
しかし女中は紗織がこの屋敷に居ることに、何の抵抗も示さなかった。
むしろ、紗織がここの住人であるような扱いだった。
紗織も自分から帰るとは言い出せなかった。
何故なのか考えないように努めた。
両親の姿も昨日の記憶も意識から追い出した。
そうすると意識自体、紗織の頭から出て行ってしまったようで、
まるで抜け殻のように時間を過ごした。
夕食の案内をされたので、言われるがままに食べる。
家庭の食卓に並ぶ料理とは程遠い懐石料理が、
紗織の舌にはほとんど味がしなかった。
二口ほど食べて、自然と箸が止まった。
「どうかなさいましたか?」
そばに控えていた女中が声をかける。
「・・・・・の・・・・・・ぁたし・・・」
朝からずっと声を出していなかったせいで、
うまく発声ができない。
女が、上品な仕草で白く長い首を傾げる。
食事が済むとまた、美しい女中の後ろをついて歩いて
日の差す板張りの廊下を素足で踏みしめながら移動した。
次に通された部屋は、庭に面した板張りの部屋だった。
座り心地の良い大きな揺り椅子のひとつに腰掛け、
手入れの行き届いた、まるで京都のどこかの寺にあるような広い日本庭園を無感情に眺めた。
昼食と言われればまた食べて、
通された同じ部屋でまたぼんやりとしていた。
何時の間にか橙色に染まった空を眺めて、自分の図太さにちょっと笑った。
いったい自分はここで何をしているのだろう。
帰りたいとは思わなかった。
あの美人の女中に、
「お帰りになりますか?」
と問われれば、
「はい」
と答えただろう。
しかし女中は紗織がこの屋敷に居ることに、何の抵抗も示さなかった。
むしろ、紗織がここの住人であるような扱いだった。
紗織も自分から帰るとは言い出せなかった。
何故なのか考えないように努めた。
両親の姿も昨日の記憶も意識から追い出した。
そうすると意識自体、紗織の頭から出て行ってしまったようで、
まるで抜け殻のように時間を過ごした。
夕食の案内をされたので、言われるがままに食べる。
家庭の食卓に並ぶ料理とは程遠い懐石料理が、
紗織の舌にはほとんど味がしなかった。
二口ほど食べて、自然と箸が止まった。
「どうかなさいましたか?」
そばに控えていた女中が声をかける。
「・・・・・の・・・・・・ぁたし・・・」
朝からずっと声を出していなかったせいで、
うまく発声ができない。
女が、上品な仕草で白く長い首を傾げる。