この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Secret space
第17章 連続四夜 第三夜
地球上のどんな速さを得たとしても、夜の空に不気味に浮かぶ青白い月は
ぴったりと後ろに張り付いて離れないように、
闇はどこまでもついてくる。
全身の力を振り絞って走る少年の呼吸は既に荒く、ぜいぜいと苦しく詰まっている。
『オマエガ――
「違う!!」
振り絞って叫んだ声は、闇が嘲笑いに掻き消され消えた。
「違う! 違う! 違う!」
少年はその場にうずくまる。
首を振り乱しては、しっかりと耳を塞いで、何度も絶叫する。
幼い声は徐々に掠れて裏返る。
そのうち だらりと、少年の小さな身体のあらゆる輪郭が解け、
水よりも油に近い液体が滴り落ち始めた。
少年は溶けた。
彼がうずくまっていた場所には黒く濁った水溜りだけが跡を残す。
古びた重油のような粘性を持ったその液体は、じんわりと床に広がると
時折、哀しそうに震え、チガウと誰にも聞き取れないような小さな音を発した。
闇の音のない薄笑いが聞こえるようだった。
こつ こつ と
寸分の乱れも無く確かな足音が暗闇に響いた。
少年の水溜りをびしゃりと靴底で踏み躙って 男は現れた。
一度だけ、ざ と水面を薙ぎ払っては、そこに何もなかったように歩く。
わずかに濡れた足跡だけ残して、
真っ直ぐと、揺ぎ無い足取りで 男は闇の中を進む。
新たな獲物を狙って、目を爛々と輝かせて 闇が再び騒ぎ出す。
ぴったりと後ろに張り付いて離れないように、
闇はどこまでもついてくる。
全身の力を振り絞って走る少年の呼吸は既に荒く、ぜいぜいと苦しく詰まっている。
『オマエガ――
「違う!!」
振り絞って叫んだ声は、闇が嘲笑いに掻き消され消えた。
「違う! 違う! 違う!」
少年はその場にうずくまる。
首を振り乱しては、しっかりと耳を塞いで、何度も絶叫する。
幼い声は徐々に掠れて裏返る。
そのうち だらりと、少年の小さな身体のあらゆる輪郭が解け、
水よりも油に近い液体が滴り落ち始めた。
少年は溶けた。
彼がうずくまっていた場所には黒く濁った水溜りだけが跡を残す。
古びた重油のような粘性を持ったその液体は、じんわりと床に広がると
時折、哀しそうに震え、チガウと誰にも聞き取れないような小さな音を発した。
闇の音のない薄笑いが聞こえるようだった。
こつ こつ と
寸分の乱れも無く確かな足音が暗闇に響いた。
少年の水溜りをびしゃりと靴底で踏み躙って 男は現れた。
一度だけ、ざ と水面を薙ぎ払っては、そこに何もなかったように歩く。
わずかに濡れた足跡だけ残して、
真っ直ぐと、揺ぎ無い足取りで 男は闇の中を進む。
新たな獲物を狙って、目を爛々と輝かせて 闇が再び騒ぎ出す。