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Secret space
第17章 連続四夜 第三夜
『お前が 殺した オマエガ殺したァ お前がコロシタ
おまえがころしたオマエガ コロシタ』
「そうだ」
男は歩みを止め、煩そうに一度眉を軽く引き上げて見せると、
既に洗練された凛とした佇まいで振り返って言った。
「それがどうした」
ざわめいていた闇がぴたりと止まる。
男はゆったりとした口調で、口元に笑みさえ浮かべてもう一度繰り返した。
「それが どうした?」
ぶよぶよと蠢いて、お互いの顔を暫く見合わせると、
闇は音もなく退き上げ始めた。
その様子を見ながら男は、
秀麗な口元の端を僅かに吊り上げて、咽喉奥でくっくと笑った。
その時、
背後で どしゃり と、生身の肉が床に打ち付けられる厭な音がした。
自分の後ろの音源に ゆっくりと振り返る。
男の数メートル先の暗闇には
力なく床に横たわる少女の身体があった。
色のない着物から投げ出された細い四肢の持ち主を
その顔がはっきりと見えなくても、決して見間違える筈も無い。
身体が凍りつく。
手先と足先から、ざざざと血が引いてゆく。
足が鉛のように重い。
しかし、 行って確かめなければならない。 どちらなのかを。
闇たちが静かに見守る中を、
男はゆっくりとした動作で 倒れた少女の傍に寄ると抱き起こした。
掛かっていた艶やかな黒髪がさらさらと流れて、少女の白い顔が露わになる。
色褪せた唇は力無く弛んで、温かい呼気を吐くかわりに
端からとろりと 冷えた赤い血液が垂れ流れている。
半端に開かれた瞼から覗く双眸は、既に光を失い、
暗い虚を映してどよりと濁っている。
男は無言で、冷たく硬直し始めている身体を胸に抱く。
おまえがころしたオマエガ コロシタ』
「そうだ」
男は歩みを止め、煩そうに一度眉を軽く引き上げて見せると、
既に洗練された凛とした佇まいで振り返って言った。
「それがどうした」
ざわめいていた闇がぴたりと止まる。
男はゆったりとした口調で、口元に笑みさえ浮かべてもう一度繰り返した。
「それが どうした?」
ぶよぶよと蠢いて、お互いの顔を暫く見合わせると、
闇は音もなく退き上げ始めた。
その様子を見ながら男は、
秀麗な口元の端を僅かに吊り上げて、咽喉奥でくっくと笑った。
その時、
背後で どしゃり と、生身の肉が床に打ち付けられる厭な音がした。
自分の後ろの音源に ゆっくりと振り返る。
男の数メートル先の暗闇には
力なく床に横たわる少女の身体があった。
色のない着物から投げ出された細い四肢の持ち主を
その顔がはっきりと見えなくても、決して見間違える筈も無い。
身体が凍りつく。
手先と足先から、ざざざと血が引いてゆく。
足が鉛のように重い。
しかし、 行って確かめなければならない。 どちらなのかを。
闇たちが静かに見守る中を、
男はゆっくりとした動作で 倒れた少女の傍に寄ると抱き起こした。
掛かっていた艶やかな黒髪がさらさらと流れて、少女の白い顔が露わになる。
色褪せた唇は力無く弛んで、温かい呼気を吐くかわりに
端からとろりと 冷えた赤い血液が垂れ流れている。
半端に開かれた瞼から覗く双眸は、既に光を失い、
暗い虚を映してどよりと濁っている。
男は無言で、冷たく硬直し始めている身体を胸に抱く。