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Secret space
第17章 連続四夜 第三夜
男は 目を覚ました。
視界に映るのは 美しく木目の揃えられた、見慣れた木の天井。
辺りは暗い。和紙張りの照明が、ぼんやりとした光を放っている。
身体に掛かる布団をなぎ払って、がばりと身を起こす。
ドッドッ と、内側から拳で叩くように心臓が鼓動している。
全力疾走をした後であるかのように呼吸が荒い。
男は、それが恐ろしく困難であるかのように、ゆっくりと緩慢な動作で隣を見遣った。
そこにはやはり、先ほどと同じく、紗織がこちらに背を向けて横たわっている。
滑らかなカーブを描く肩のラインの、剥き出しの白い素肌が夜の闇の中でもみてとれる。
男は 恐る恐る手を伸ばす。
鋭利な刃物の先にでも手を遣るような慎重さで その肩に手をかける。
『温かい』
男は止めた息を少しずつ吐きだしながら、
そのまま手に力を込めて紗織の身体を仰向けにして顔をこちらへむかせた。
しっかりと閉じられた瞼を縁取る長い睫。
顔のパーツをなぞる曲線は緩やかに緩急を織り成し、
滑らかできめ細かな皮膚の上に美しい造形を作る。
朱色に染まった唇は僅かに開いており、
くぅくぅという愛らしい寝息と伴に 端から透明な涎が垂れている。
男は僅かに顔をほころばせる。
紗織の顎に手を添え、親指で口から透明に垂れる液体を拭ってやる。
そのまま指で唇に触れる。色づいて柔らかな輪郭にそってなぞる。
自分の唇でも触れる。
柔らかさとしっとりとした感触に、こちらが現実であるということを確信する。
男は、腕の中の者をしっかりと抱きしめた。
男の腕の力が強すぎるのだろう。紗織がぐぅと呻き声を漏らした。
苦しさが勝って深い眠りから起こしてしまったかも知れない。
でも構わない。
男は決して腕の力を解かなかった。
視界に映るのは 美しく木目の揃えられた、見慣れた木の天井。
辺りは暗い。和紙張りの照明が、ぼんやりとした光を放っている。
身体に掛かる布団をなぎ払って、がばりと身を起こす。
ドッドッ と、内側から拳で叩くように心臓が鼓動している。
全力疾走をした後であるかのように呼吸が荒い。
男は、それが恐ろしく困難であるかのように、ゆっくりと緩慢な動作で隣を見遣った。
そこにはやはり、先ほどと同じく、紗織がこちらに背を向けて横たわっている。
滑らかなカーブを描く肩のラインの、剥き出しの白い素肌が夜の闇の中でもみてとれる。
男は 恐る恐る手を伸ばす。
鋭利な刃物の先にでも手を遣るような慎重さで その肩に手をかける。
『温かい』
男は止めた息を少しずつ吐きだしながら、
そのまま手に力を込めて紗織の身体を仰向けにして顔をこちらへむかせた。
しっかりと閉じられた瞼を縁取る長い睫。
顔のパーツをなぞる曲線は緩やかに緩急を織り成し、
滑らかできめ細かな皮膚の上に美しい造形を作る。
朱色に染まった唇は僅かに開いており、
くぅくぅという愛らしい寝息と伴に 端から透明な涎が垂れている。
男は僅かに顔をほころばせる。
紗織の顎に手を添え、親指で口から透明に垂れる液体を拭ってやる。
そのまま指で唇に触れる。色づいて柔らかな輪郭にそってなぞる。
自分の唇でも触れる。
柔らかさとしっとりとした感触に、こちらが現実であるということを確信する。
男は、腕の中の者をしっかりと抱きしめた。
男の腕の力が強すぎるのだろう。紗織がぐぅと呻き声を漏らした。
苦しさが勝って深い眠りから起こしてしまったかも知れない。
でも構わない。
男は決して腕の力を解かなかった。