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Secret space
第3章 3
「居たのか」


不意に声を掛けられて、
紗織は悲鳴を上げて、文字通り飛び上がった。

開けられた障子には、スーツ姿の男が立っていた。


「ここは俺の屋敷だ。
 俺が居るのがそんなに驚くことか?」


男は静かな物腰で部屋に入ると、
部屋の大きな椅子のひとつに腰掛けた。


「俺のほうこそ、お前がまだ
 この屋敷に残っているとは思わなかったな。
 帰ってもよかったんだぞ。
 まさか鍵を掛けられていたわけでもあるまい?」


男が嗜虐的な笑いを含んで、紗織を見る。


「・・・・ざけないで」


荒れ狂う怒りに震えながら、
まだ掠れる声を振り絞った。


「あなたが! あなたがそうさせたんじゃない
 あなたが!!

 帰ってもよかったですって!?
 私だってこんなとこからさっさと帰りたかった!!
 すぐに帰りたかったわよ家に、家・・・
 私の家に?
 私を売った両親の家に!?

 一体どんな顔して帰れというの!!
 いったいどんな・・・・顔で

 二人が、迎え入れてくれるというの・・・?」


 自分の目から涙が留まりなく流れ出ていることに気づいた。
男の顔から微笑は消え、そっと椅子から立ち上がった。

紗織の頭の中で、答えが怖くて無理やりに停止していた思考が
怒りとともに、一気に流れ始めた。
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