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第3章 3
「こっちに来ないでよ!
 悪かったわね、まだ居て!!
 私も自分で馬鹿だと思う。こんなとこに居るなんて。
 ちゃっかりご飯まで食べちゃって、なにしてたんだろう?
 さっさと逃げ出すべきだったわ。ここ以外ならどこへでも行くべきだった!
 どこへだって! 家じゃなくったって
 すぐに出て行くわ!
 すぐ・・・!

 っ・・・・放してよ!!
 出て行くから放して!!」


男は紗織を抱きしめていた。
紗織は暴れたが、男の腕の力に最後には負けた。


「すまない」


男が低い声で囁く。

本当なら、殺してやりたいくらい憎い相手なのに、
こうやって抱きしめられると、胸が張り裂けそうに疼いた。

そんな自分が誰よりも一番憎くらしく、そして惨めだった。


「帰る家が・・・、もう無いの。

 あなたが奪ったのよ、全部。

 あなたを恨むわ。
 あなたなんて嫌い、大嫌い・・・・」


すっかり涙声なのもあって、ひどくみっともない声だ。
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