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第18章 連続四夜 第四夜
さて、ここからが問題だ。


『実践するには、口での行為に持ち込む必要があるわけで・・・』


柔らかな陽の当たる廊下を歩きながら紗織は悩む。
自らその行動を起こすにはどうしても抵抗がある。


『前 みたいに、しろ とか言われたら、まだ出来る気がするんだけど・・・
 って、ああ!こんな昼間っから何考えてるんだろう、私。
 ・・・実和さんがヘンなこと言うから・・』


先程、寝室を覗いてみたが、男の姿はなかった。
実和の言っていたとおり、入浴中なのだろう。
そのまま廊下を通り過ぎて手洗いに向かった。

りん・・ろろん・・
用を済ませ、廊下に出ると、微かにオルゴールの音が聞こえた。
あの部屋の置時計が、もう主が居ないことも知らずに優しく時を告げていた。
屋敷の構造上、紗織がその部屋に一番近づくのは、御手洗の場所へ行く時だ。
それ以外は近寄らない。特に用事もある訳ではない。

紗織は眉を顰め、暫くその音のする方向を見つめていたが、
何か決心するように大きく息を吐き出すと、歩き出した。

常にぴたりと閉ざされた格子戸の前で止まる。

戸に手を掛ける。

開かない。

鍵が掛かっている。

紗織は、実和がこの戸を開けるのを 一度見たことがある。
あの男の弟の――彼のことを思い出すと今でもぞっとして身が凍るのだが――
精司の背後から、実はしっかりと戸の細工を操る様子を、紗織は見て覚えていたのだった。
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