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Secret space
第18章 連続四夜 第四夜
「確かこの格子の・・・この枠を横に引くと開くのよね」
この部屋の扉が開かれた日、実和がした仕草と同じ方法で
紗織は戸を飾る数ある格子の中から一つを選んで横に引いた。
「?」
予想に反して手応えは無く、極微の動きもない。
「おかしいなぁ。確かにこの枠だったと思うけど・・」
他にも、これと思わしき格子を引っ張ったり押したりしてみるが、
重い引き戸は頑として受け付けず、鍵は掛かったままだった。
部屋の扉は見かけよりずっと複雑な構造をしているらしい。
紗織の知らないからくりが、まだ施されているに違いない。
入って見たところで、その中の様子など
思い出したくも無いほどよく覚えてはいるのだが、
紗織はその扉を開けれないことに 苛立ちを覚えた。
年季の入った木材だけが放つ 濃い茶色をしたその戸を背もたれにして、
紗織はそのまま廊下にぺたりと腰を下ろした。
『・・・あの人は、この中に 一体何を閉じ込めているのだろう』
ぼんやりと心の中で呟く。
『他の誰にも、自分にも 触れられないように鍵を掛けて、何を秘めているのだろう』
思い出すには余りにも、暗く重い過去だろうか。
決して報われることのなかった想いか。
単純には拭えない もっと複雑な何か?
その奥底に踏み込んで、この手で取り出してみたい
そして揺るぎの無い選択を迫りたいと思うのは、
醜い猜疑心が仕向ける どうしようもないエゴだろうか。
この部屋の扉が開かれた日、実和がした仕草と同じ方法で
紗織は戸を飾る数ある格子の中から一つを選んで横に引いた。
「?」
予想に反して手応えは無く、極微の動きもない。
「おかしいなぁ。確かにこの枠だったと思うけど・・」
他にも、これと思わしき格子を引っ張ったり押したりしてみるが、
重い引き戸は頑として受け付けず、鍵は掛かったままだった。
部屋の扉は見かけよりずっと複雑な構造をしているらしい。
紗織の知らないからくりが、まだ施されているに違いない。
入って見たところで、その中の様子など
思い出したくも無いほどよく覚えてはいるのだが、
紗織はその扉を開けれないことに 苛立ちを覚えた。
年季の入った木材だけが放つ 濃い茶色をしたその戸を背もたれにして、
紗織はそのまま廊下にぺたりと腰を下ろした。
『・・・あの人は、この中に 一体何を閉じ込めているのだろう』
ぼんやりと心の中で呟く。
『他の誰にも、自分にも 触れられないように鍵を掛けて、何を秘めているのだろう』
思い出すには余りにも、暗く重い過去だろうか。
決して報われることのなかった想いか。
単純には拭えない もっと複雑な何か?
その奥底に踏み込んで、この手で取り出してみたい
そして揺るぎの無い選択を迫りたいと思うのは、
醜い猜疑心が仕向ける どうしようもないエゴだろうか。