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Secret space
第4章 4
 長い渡り廊下を女中の後ろについて歩いた。
最初のうちは、歩くたびに新たに流れ出る液体に困って、足を止めたが、
いい加減止まったのもあって、もうかまわないことにした。

すっかり夜になってしまったので、明かりがあってやっと薄暗いこの廊下では
泣き顔をほとんど見られずにすんで、紗織はほっとしていた。
渡り廊下が庭を横切って伸びている。
どうやら風呂は離れにあるようだ。 つくづく広い屋敷だ。


「あの・・・・」


そっと声を掛けてみる。


「はい」


美人の女中がこれ以上にない優雅さで振り返る。
紗織は、これには少したじろいでしまった。


「あの、あなたはここに住んでいるのですか?」


「実和とお呼びください」


「あ、実和さんは・・・」


「いえ、私をお呼びになるときは、ただ『実和』と」


「えっと・・・」


実和と名乗った女性は唇に柔らかな笑みを浮かべて見せると、
前を向き直って、再び廊下を歩き始めた。


「私がここに住み込みで働かせていただき始めて、
 彼此十年以上は経ちます」


「ひょっとして、あなたも・・・」

「いいえ。
 ただの使用人ですよ、私は」


「あの・・・、ここは一体どこ・・いいえ、
 どういう処なのですか?
 あの男・・の人は、いったい誰なんですか」
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