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Secret space
第2章 2
「逃げ、なくちゃ」


自分が逃げたら家はどうなるんだろうという考えを
一瞬で追い払った。
今はただ、この場から逃れたかった。

自分でもびっくりするくらいのスピードで回れ右して、
先ほど案内した女中が閉めた襖を勢いよく開けた。


「ひっ」


 そこには背の高い男が立っていた。
予期せぬ光景に悲鳴をあげて後ずさった。

男は流暢な動作で部屋に入り、襖を閉める。

この男こそ
今から紗織を手篭め(まったく馬鹿馬鹿しいほど古くさいけど、ぴったりな表現!!)
にしようとしているのだと認識するのに、そう時間はかからなかった。


(しまった・・・)


紗織は舌打ちした。

後ずさるなんてしないで、思いっきり突き飛ばすんだった。
そうすれば、少なくともこの部屋からは逃げられた。
後悔しても、もう遅かった。
男は無言で紗織に近寄る。

 そっとあたりを覗った。
この男が入ってきた襖の反対側にも襖、部屋の左側もやはり襖で、
右側は円の形に壁をくり貫いた格子つきの窓だ。

どちらかの襖が隣の部屋かなにかにつながっているに違いない。
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