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Secret space
第4章 4
 短い後ろ髪の下に現れている首筋から、すっと潔く伸びている背筋。
均整の取れて引き締まった体つきの、その筋の一すじを取っても、
紗織とはまったく異なる、異質の細胞で出来ているかのようだ。

 逞しい男の体に、無意識のうちに見とれていると、
男が急に振り向いたので、慌てて視線を反らした。
 ちゃぷ・・・
視界の外で、男がお湯に浸かる気配がした。
視線を外しても、先ほど目にした男の体つきが脳裏に浮かぶ。
思わずそちらに目をあげると、男も紗織を見つめていた。


「こっちに来い」


男が無表情で言い放つ。
紗織はまた腹が立ってきて、無言で睨み返した。
 短い沈黙のあと、男は行き成り近寄って紗織の腕を掴み、
強引に自分の元に抱き寄せた。
豊かなお湯が ザバリと波を立てて、浴槽から溢れ流れる。

後ろから、ウエストのあたりに腕を回されて、きつく抱きしめられ、
背中に男の肌が密着するのを感じて動けずにいると、
男の手が、上へと伸びて、それが当然であるかのように
紗織の胸の双丘をゆっくり愛撫し始めた。


「あっ・やだ・・ちょっとっ・・・ッ」


逃れようと身をよじらせる紗織の耳元に、男の熱い吐息がかかる。
男は紗織の胸の膨らみの、その張りと柔らかさを確かめるように、
じっくりと手で弄ぶ。
指の長い大きな男の手と、それによってくにくにと変形していく自分の胸を見ていると、
またなんだか、変な熱が紗織の脳を襲う。


「お前、まだ胸が小さいな」


「んっ・・・何よ・・・じゃあその手・・どけてっ・・・」


 紗織はブラのカップはいちおうBだし、標準的だと思ってはいたが、
この男に、小さいと言われると、そうなのかとも思った。
特別、自分の胸に自信もコンプレックも無かったが、
それでも、多少なりとも自尊心が傷つかないはずがなかった。


「いいさ、これからまた大きくなる。
 と言うよりも、大きくさせてやるさ」


小さな微笑を口に浮かべて、男が胸を撫でながら言う。
実際には、男の上に背を向けて座り込んだ体勢では、
男の顔など見れるはずもなかったが、
 紗織には、背後の男の表情が手にとるようにわかるのが悔しかった。
出来たら引っ叩いてやりたいけれど、この状態ではできそうにない。
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