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Secret space
第5章 5
幼いころ、怖い夢を見たと言っては泣く紗織を、
両親が優しくなだめて抱いて寝てくれた時のように、
ただ穏やかな安心感が、紗織の心を攫う。

それはこの男から紗織には、絶対に与えられるはずもない
有り得ないことだった。

いっそこのまま本当に眠ってしまおうと
目を固く閉じてみたけれど、妙にはっきりと目が覚めてしまって、眠れそうにない。
ずっと身体を動かさずにいたので、体の下の肩がキリキリ痛んだ。


そういえば先程からずっと、男の手は軽く紗織の頭に添えられているだけで動かない。
聞き耳を立てると、男の静かな寝息が頭上から聞こえる。
どうやら眠ってしまったようだ。

紗織はそれからもしばらく、そのまま動かずに過ごし、
男が完全に寝たかどうかを確認した。

寝息は自然だし、腰にある手もすっかり脱力して置かれているだけだ。
紗織は安堵して、男を起こさないように用心深く注意しながら
ゆっくりと、横にしていた体を仰向けにした。肩の痛みはすぐに引いた。
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