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Secret space
第5章 5
開け放たれたままの格子戸から、男が部屋の中へと入る。
紗織もその後に続き、後ろ手で静かに、部屋の引き戸を閉め合わせる。
男は紗織が先ほどまで腰を下ろしていた椅子に座り、
戸の前に立ったままの紗織を見て言った。


「今日はやけに素直だな。
 やっと受け入れたか」


「お願いがあるの」


男の言葉をほとんど無視して紗織は言った。
お願いだなんて、使いたくない言葉だったが、今はそう言ったほうが
スムーズに聞き入れられるだろう。
 先ほど悪戯にはずされたブラがひどく気になって、それを抑えるために、
脇を閉じて腕を胸に寄せ、重ね合わせた両手を握り締めた。


「何だ」


男が首もとの光沢のある生地のネクタイを緩めながら言った。


「いつまで・・私を、ここに置く気か知らないけど、
 私、昼間はちゃんと学校に行きたいの」


「学校 ね」


「いいで・・しょ?こんな屋敷に、ただじっとして居たくないの。
 それには、制服とか、いろいろと道具もいるんだけど、その・・・」


「さて、どうしようか」


顎に手をやって、少し笑いを含んだ顔で、男が考えるような振りをする。


「っ・・・どうせあなた、昼は居ないんだからいいじゃない!」


紗織は、男のもったいぶった素振りに頭にきて、つい声を荒げた。


「お前がそう言うなら、そうさせてやらなくもないが、ただし・・・」


「ただし?」


「俺が今から言うことに、お前がきちんと従ったなら、
 俺もお前の願いを聞いて、言うとおりに手配してやろう」


「なっ・・何をしろって言うの」


「別に、そんな難しいことじゃない。
 そうだな。・・・まずはそんなところに立ってないで、こっちに来たらどうだ」
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