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第5章 5
「なかなか良い舌使いだったな。
 次は、俺のものにもそうしてもらおうか」


「じょ・・・、冗談」


「ではない、もちろん。
 そのまま床に跪け」


思わず、男の股間部分のスラックスの皺に目が行く。
知識ではそういう行為があるのを知ってはいたが、
自分がその行為を行うことは想像もしていなかった。
しかもこの男にするだなんて、考えただけでも頭が痛くなりそうだ。


「どうした。出来ないのか?」


それを許さないような厳しさを秘めて、男の声が部屋に響いた。

きっとこれさえ済ませてしまえば、せめて夜以外の間は
この異常な生活から抜け出せるのだと、強く自分に言い聞かせて、
紗織は、座っている男の足と足の間の床に、膝を突いた。


「待っていても俺は何もしない。
 お前が取り出せ」


「っく・・・・」


唇をかみ締めて、男の股間に手を伸ばした。


「待て。手は使うな。口だけを使うんだ」


「そんなのっ!」


「出来ないっていうのか?」


男が冷たい響きをもって言う。
この男の声は、それだけでも、全て従わざるを得ないような気持ちに
紗織をさせた。

理不尽な要求に耐えねばならない怒りを奥歯で噛み殺して
紗織はゆっくり、男の股間に顔をうずめた。
男の両膝を手で掴んで、唇でチャックを探し当てると、
かちりと前歯で噛んで、チリチリと引き下ろした。
その時、顔にかかって邪魔になる髪の毛を、男の手が手伝うように掻き揚げたので
紗織は余計に腹が立った。
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