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第2章 2
(どうか落ち着いて、冷静に考えて。
 力ではどうやっても無理だ。
 いっそ諦めたふりして、大人しくふるまって、
 男が油断した隙をつこうか。
 うん、それはつかえる。名案だわ・・・)


 そうしているうちに、男が再び紗織の首に口付けてきた。
今度は抵抗しなかった。
そのなめらかな皮膚の感触を愉しむように、男が舌を這わせる。
紗織はただぞっとして、肌が粟立つのを感じた。
男はそのざらついた感触さえも、楽しんでいるかのようだった。

男が紗織の上着に手をかける。
紗織は抵抗したい衝動を必死でこらえた。
男の手が衣服の中に侵入し、紗織の胸をブラの上から捕らえる。


(いや!!)


紗織は心の中で叫んだ。
いくら油断させるため大人しくするからって、限度があるわ。
これ以上好きにさせてやるもんですか。


「待って」


紗織は男に声をかけた。
絶対声が震えないように、凛とした声に聞こえるように、
最大限の注意を払って発声した。


「貴方は誰?」


自分の上に覆い被さる男を見据えた。

怯えていることを悟らせてはいけない。
たぶんそれは行為への欲望をエスカレートさせるだろう。
なるべく他のことへ気を向かせよう。

そう決意した紗織の耳に、男の吹き出した笑い声が聞こえた。
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