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Secret space
第7章 7
 ゆらゆら 揺れる。 揺れ動く。
揺れているのは私の身体? 私の身体がここにある。


「いい加減に起きなさい、紗織。学校に遅刻するわよ?」


母の声が聞こえる。自分の身体を揺り起こす柔らかな手。


(全く。 せっかく人がいい気分で眠っていたのに。
 なんかすごく いい夢見てた気がするのになぁ・・・)


心地よい夢の世界から、意識が急に現実に送り返される感覚に、
紗織は小さく唸り声をあげた。

腰あたりの上の手は、紗織の身体を絶えず揺すり続けている。


「うん・・あと・・・もうちょっと寝かせてよ、お母さん・・・」


紗織は目を閉じたまま、母の手を避けるように寝返りを打って答えた。


「でも、紗織さん。もうお起きになられたほうが・・・」


(紗織さん?!!)


 はっと目を見開くと、冷水でもかけられたような勢いで
がばりと布団から起き上がった。

紗織が目を覚ました場所は、自分の部屋のベッドの上ではなく、
見慣れない広さの立派な畳敷きの部屋で、
身体を揺り動かしていたのは、エプロン姿の母の手ではなく、
茜色の品の良い着物をきちんと着付けた、美しい女の人だった。


「あれ? えと・・・今、確かに・・・」


瞬きを繰り返しては、辺りを見回している紗織に、
実和が優しく微笑みかける。


「今日は学校にお行きになるのでしょう?
 制服はそこに掛けて置きましたし、
 鞄と教科書も向こうにご用意致しておりますのよ」


紗織は裸の身体に布団を巻きつけて背中を丸める。
実和に言われるまま、部屋をもう一度見渡すと、
襖の桟に、白と紺の自分の制服が掛かっているのを確認した。


「さぁ、こちらを使いになって、お顔をお洗い下さいませ。
 私はその間に朝食の膳を整えておきますわ」


そう言って、
やっぱり微笑む実和の背後から、差し込む朝日が眩しくて、
紗織は瞼の重い目を僅かに細めた。


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