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Secret space
第7章 7
「おはよー紗織。風邪でもひいてたの?」
「紗織が休んでる間に授業、結構進んだよ。ほら、ノート今のうちに写しなよ」
いつもの教室。いつもの友達。いつもの風景。
こうやって今まで通りの学校の生活に身を置くと、
あの屋敷での三日間こそ、嘘だったのではないかと思えてくる。
まるで、本当に、何事も無かったように思える。
それが紗織には嬉しくて、苦手な数学の授業でさえも、
このままずっと終わらなければいいのにと願った。
それでも、あっという間に訪れる放課後。
普段なら、家族の夕食の支度のために 真っ先に校門を飛び出る紗織だが、
今日は、HRがとっくに終わったというのに、
帰宅の用意さえ終えずにいた。
「あれ?今日はすぐ帰らなくていいの?」
すでに人が疎らになった教室の中、席から動こうとしない紗織を見て
クラスメイトの吉田恵(めぐみ)が声をかけた。
彼女とは中学のときから一緒で、紗織の一番の親友である。
お互いに色んなことを話す仲だったので、
紗織の家庭の事情も 恵はよく知っていた。
「うん、まあね」
恵は、紗織より小柄な身体を機敏に動かし、
目を反らして小さく答える紗織の 前の席の椅子を引いて、
後ろ向きに腰掛けると紗織と向かい合い、机に頬杖を突いた。
二つに分けて結んだほんのり亜麻色の髪を揺らして、
紗織の顔を心配そうに覗き込む。
「休んでた間、なんかあった?」
「え?別に。・・・何で?」
感の鋭いこの言葉に、紗織は心の中では慌てたが、
面では、 まるで心当たりが無い というような表情をつくって恵を見返した。
突然、紗織の身に振りかかってきた、まだ自分でも信じられないようなこの状況を、
純粋な心のこの友人に、とても話す気にはなれなかった。
「紗織が休んでる間に授業、結構進んだよ。ほら、ノート今のうちに写しなよ」
いつもの教室。いつもの友達。いつもの風景。
こうやって今まで通りの学校の生活に身を置くと、
あの屋敷での三日間こそ、嘘だったのではないかと思えてくる。
まるで、本当に、何事も無かったように思える。
それが紗織には嬉しくて、苦手な数学の授業でさえも、
このままずっと終わらなければいいのにと願った。
それでも、あっという間に訪れる放課後。
普段なら、家族の夕食の支度のために 真っ先に校門を飛び出る紗織だが、
今日は、HRがとっくに終わったというのに、
帰宅の用意さえ終えずにいた。
「あれ?今日はすぐ帰らなくていいの?」
すでに人が疎らになった教室の中、席から動こうとしない紗織を見て
クラスメイトの吉田恵(めぐみ)が声をかけた。
彼女とは中学のときから一緒で、紗織の一番の親友である。
お互いに色んなことを話す仲だったので、
紗織の家庭の事情も 恵はよく知っていた。
「うん、まあね」
恵は、紗織より小柄な身体を機敏に動かし、
目を反らして小さく答える紗織の 前の席の椅子を引いて、
後ろ向きに腰掛けると紗織と向かい合い、机に頬杖を突いた。
二つに分けて結んだほんのり亜麻色の髪を揺らして、
紗織の顔を心配そうに覗き込む。
「休んでた間、なんかあった?」
「え?別に。・・・何で?」
感の鋭いこの言葉に、紗織は心の中では慌てたが、
面では、 まるで心当たりが無い というような表情をつくって恵を見返した。
突然、紗織の身に振りかかってきた、まだ自分でも信じられないようなこの状況を、
純粋な心のこの友人に、とても話す気にはなれなかった。