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Secret space
第7章 7
 紗織が途切れ途切れの言葉で、どうにか自分の居場所を告げると、
男はすぐに行くと言って電話を切った。
 本当に 男はすぐやって来た。

車から降り、砂地の地面と微かな足音を発して、
ブランコに腰掛ける紗織の前に立った。
闇に溶け込む色のスーツを着こなしたその立ち姿は、
遊具の散らばる公園にあまりにも不釣合いで、浮き上がって見える。

男はゆっくりとした動作で、地面に置かれた紗織の鞄を持ち上げると、
まだ涙を零している紗織に手を差し伸べた。


「行くぞ」


紗織は戸惑いながらも、その手を取らずに、ただ無言で立ち上がった。
無視をしたのは自分からなのに、胸が痛むのも自分だった。

 結局、無理やり手を引かれ、乗り込んだ車の後部座席で、
紗織が静かに玉のような露を目から零していると
男は 紗織の濡れた瞳に口付けた。

止め処なく流れる涙に、その度に口寄せられる。
また零しては、また吸い取られる。その繰り返し。


「もう、やめてよ・・・やめて、 そんなこと」


紗織は堪らず声をあげた。


「お前が泣き止んだらやめてやる」


男が紗織の固く閉じられた瞼に、口付けながら答えた。
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