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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第4章 魔王④
 男の指先が、フィーネの乱れた前髪を整えると頬に触れた。彼女を見つめる翠色の瞳は、どこか嬉しそうに細められている。

「お前は、私が神官たちに殺されると、心配をしてくれたのだな」

 フィーネは彼の言葉に答えることが出来ず、代わりに視線を逸らした。
 男の言葉が図星だったからだ。

 視線を合せないまま、男に問う。
 
「あなたは一体……何者なのですか?」

 フィーネの頬を撫でる手が止まった。不意に相手の動きが止まったので、不思議に思い視線を戻す。

 そこには、少し寂しげに笑う男の顔があった。笑みの裏に潜む気持ちを表すかのように、フィーネを組み伏せる片手にぎゅっと力が入る。

 しかし笑みはすぐに消え去り、元の冷然とした表情に戻った。真一文字に結ばれた形の良い唇が動く。
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