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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第28章 大浴場③
「……んっ……ふぅ……」

 小さな声だが、周りに聞こえないかと不安を抱えているフィーネにとっては、とても大きく聞こえる。大浴場全体に反響しているような、そんな錯覚する覚える。

 これだけフィーネが周囲に気を使っているというのに、主人の手は全く遠慮がない。
 むしろ、苦しそうに声を抑えるフィーネの顔を覗き込みながら、口元を意地悪く緩ませている。

 恥ずかしさと周りに聞こえる不安と、与えられる悦楽が入り混じってくしゃっとなった顔を楽しむように。水と汗で濡れた頬に口づけを落とし、興奮抑えきれない様子の声色で主人が囁く。

「フィーネ、いい子だ。私の言いつけを必死で守って……」

「ぁっ……ぅ、こ、こんなところ……誰かに見られるわけには……」

 彼の囁きに、フィーネは声を堪えつつ、苦しさから涙を滲ませ答える。
 その表情と声が、魔王の劣情を駆り立てたらしい。
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