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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第28章 大浴場③
 魔王はホッとしたように一つ息を吐き出すと、浮かぶピアチェの花を一輪手にした。そして花弁でフィーネの赤らんだ頬をなぞり、首筋、鎖骨へと降ろしていく。

 先ほどとは違う、甘い声色で囁きながら。

「声を我慢する表情にもそそられたが、怒る顔も堪らなく可愛いものだな。もっといじめて、わざと怒らせたくなる」
 
「も、もうっ! これ以上私を、からかわないでくださ……きゃぁっ!」

 頬に赤みを増しながら発した言葉は、すぐさま驚きと恥ずかしさに満ちた悲鳴にとってかわった。

 魔王の手が、彼女の身体を覆っていたタオルを剥いだからだ。
 咄嗟に大切な部分を隠すフィーネ。だがいつものとおり彼に手を奪われ、主の前に素肌を晒すことになった。

 生まれた状態の姿から視線が逸らせないまま、魔王の少し上ずった声が浴場に響いた。 

「もう声を我慢する必要はない……続きをしようか、フィーネ」
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