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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第31章 大浴場⑥
 大浴場で魔王と鉢合わせし、そのまま身体を重ねてしまったことを。

 瞬時に発生した熱が、フィーネの顔を赤くした。

 それを見たアンジェラが、慌てて頭の上に冷たいタオルを乗せた。ひんやりとした冷たさが、フィーネの沸騰した頭を冷やしてくれる。

 彼女が落ち着いたのを見届けると、アンジェラはドアの方に視線を向けて言い放った。

 怒りを込めて。

「フィーネ様が倒れる原因となった方は、しばらくこの離れを出禁にいたしますからね! 全く……フィーネ様が可愛くて仕方ないのは分かりますが、今回は酷すぎます! 反省なさって下さい、魔王様!」

「……分かっている」

 蚊の鳴くような声が、ドアの向こうから聞こえてきた。
 どうやらかなりアンジェラに絞られたらしい。
 
 魔王の声色を聞き、フィーネは申し訳ない気持ちで一杯になった。

(断り切れなかった私も悪いのに……魔王様だけが悪いわけじゃ……)

 しかし、恐ろしいほどの怒りを見せるアンジェラに、それを伝える勇気はなかった。


 結局、魔王が何度も反省の意を示し、アンジェラの怒りが解けたのは、四日後だった。
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