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第31章 大浴場⑥

　目が覚めると、視線の先に見慣れた天井が映った。どうやら、離れのベッドに寝かされているようだ。

　頭の上には、ひんやりと冷やされた何かが乗っている。それを取ろうと手を動かした瞬間、

「フィーネ様！　お目覚めになりましたか！　ああ……良かったです」

　そう叫び、瞳を潤ませながらこちらを覗き込むアンジェラの姿があった。慌てて起き上がろうとするフィーネの肩を優しく掴むと、身を起こすのを助けてくれた。

　身体を起こすと、目の前の視界が一瞬グラッと揺らいだ。
　酷い疲労感とだるさで、身体も重い。

（私……どうしたのかしら……）

　アンジェラに支えられたまま、まだ焦点定まらない様子でフィーネは尋ねた。

「あ、あの……わたし……いったい……」

「覚えていらっしゃいませんか？　あなた様は大浴場でのぼせて、倒れられたのですよ？」

「えっ……」

　それを聞いた瞬間、先程までの記憶がものすごい勢いで思い出された。