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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第32章 女神と魔王①
 時折休憩をはさみながらやって来たのは、ディザニア国が一望できる丘だった。

 フィーネは馬に乗ったまま、目下に広がる光景を言葉なく見つめた。

 まず目に飛び込んで来たのは、辺り一面を覆い尽くす緑。
 それを割る様に清らかな水を湛える川が流れ、その先には大きな滝が水しぶきで虹を作りながら、流れる水を下へ下へと運んでいく。

 別の方向に視線を向けると、魔族たちが暮らしていると思わせる土地が所々目に入った。建てられた家からは細く煙が上がり、村の周辺には、まるで色とりどりの絨毯を敷いているかのような畑が広がっていた。

 畑からさらに遠くを見ると、どこまで続いているか分からない広大な海の青と空の青が混じり合っている。

 自然の美しさと魔族たちの営み、その両方から感じる穏やかで美しい風景に、フィーネは目を奪われた。

 風景を見続けるフィーネに、魔王がどこか笑いを含んだ声で話しかける。
 黙って見続けているフィーネの様子が、面白かったのだろう。

「ここは、ディザニア国を象徴する景色が一望できる場所だ。気に入ったのか?」

「は、はい……こんな光景……初めてですから」

 今まで聖地と言う狭い場所に閉じ込められていたフィーネにとって、目の前の景色は絶景ともいえる光景だった。
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