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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第37章 名前③
 自身は勇者への献上品だからと抵抗はしていたが、今思えば心の奥底ではソルに奪われることを、求めていたのではないかと。

 思い浮かんだ可能性に、心臓が跳ね上がる。

(じゃあ私は……出会った時からあの方を……?)

 確かに彼は、美しい容姿をしている。

 一目惚れでもおかしくはないと思った瞬間、自身を慰め、ソルに見つかって激しく抱かれた時を思い出した。

 何度も達し朦朧とする意識の中、脳裏に思い浮かんで消えて行った言葉を。

(あの時、私は『ソル』という言葉を思い浮かべていた……)

 魔王の名だ。

 しかしそれは、ついさっき知った情報だ。
 なのに彼の名を知る前から、その単語をフィーネは知っていたのだ。

(これは……偶然なの? でも、あの方の名を知る機会はなかったはず……)

 初対面の男に襲われ、嫌悪感なく受け入れた自分。
 知らない筈の名を知る自分。
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