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第37章 名前③

　何度も身体を重ねたが、決して無理強いはしなかった。
　フィーネ自身も、彼に抱かれることを嫌だとは思わなかった。

　むしろ自分から求めてしまうほど……

　何がきっかけで好きになったのかを考える。

（ディザニア国に連れて来られて、あの方の優しさに惹かれたから？）

　何一つ、矛盾のない理由だ。
　それなのに、

"……違う！"

　フィーネの中で、何かが大きく叫んでいる。
　そんな理由で彼を好きになったのではないと、心が強く否定している。

　思わぬ心の反応に、フィーネは戸惑った。

（じゃあ、いつから？　いつからあの方を……？）

　自分の考えを否定する何かに問いかけると、それはイメージとしてフィーネの脳内に答えを示した。

　初めて、聖地でソルに出会った時のことを。
　
　無理やり抱かれたのにも拘らず、嫌悪感がなかった。
　知らない男に犯されているのにも拘らず、身体が悦びの反応を見せていた。