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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第8章 魔王⑧
癒しの力は、瀕死の状況すら回復できると言われている。その力の前では、こんな小さな傷の治療など、取るに足らないものだ。
強大な力を与える聖女を、敵が手放すわけがない。
フィーネが魔族側に取り込まれれば、人間にとって更なる脅威となるだろう。
納得のいく返答だった。
人間についても、魔族についても結局は、
(私が戦いの道具には変わりない。私の役目は、主人となった方に尽くすこと。ならば相手が魔王であっても……同じことだわ)
そう思ったら、不思議なほどスッと言葉が出た。
「分かりました。あなたに……従いましょう」
口にしたら、何故か心が軽くなった。
本来なら、魔族に聖女の力が渡らぬよう、今ここで自死を選ぶべきだろう。
しかし、聖地で人としての扱いを受けてこなかったフィーネにとって、涙を拭い、頬に触れる魔王の手は人間以上に温かく、優しかった。
強大な力を与える聖女を、敵が手放すわけがない。
フィーネが魔族側に取り込まれれば、人間にとって更なる脅威となるだろう。
納得のいく返答だった。
人間についても、魔族についても結局は、
(私が戦いの道具には変わりない。私の役目は、主人となった方に尽くすこと。ならば相手が魔王であっても……同じことだわ)
そう思ったら、不思議なほどスッと言葉が出た。
「分かりました。あなたに……従いましょう」
口にしたら、何故か心が軽くなった。
本来なら、魔族に聖女の力が渡らぬよう、今ここで自死を選ぶべきだろう。
しかし、聖地で人としての扱いを受けてこなかったフィーネにとって、涙を拭い、頬に触れる魔王の手は人間以上に温かく、優しかった。