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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第68章 これから⑧
 フィーネはソルの腕に抱かれながら、穏やかな気持ちで横になっていた。自分の髪を撫でる優しい手つきを感じながら、微睡んでいる。

 嵐のような激しさによって疲れた身体には、髪を撫でる規則的な動きが、とても心地いい。と、不意に、髪を撫でていた手がフィーネの頰に触れた。

「……あ」

 愛する人からもたらされる温かさに、微睡んでいたフィーネの意識が、現実へと戻った。

「……起こしてしまったか。すまない」

 フィーネが、完全に眠っていると思っていたのだろう。それを起こしてしまったと、ソルが申し訳なさそうに謝罪する。

 眠るつもりはなかったため、フィーネは小さな笑みを浮かべると、黙って首を横に振った。

 そして、

「あたたかい……」

 自分の手を、頰に触れるソルの手に重ねると、安心したように呟いた。
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