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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第16章 疼き①
 ディザニアに連れてこられてから、二十日ほどが経った。

 フィーネは、魔王が生活をおくる城の離れで暮らしていた。彼女がこの国で目覚めた場所も、この離れの寝室だった。
 城の敷地内とはいえ、離れの周りには自然が溢れ、とても静かな環境だ。

 ここは城と違って、非常にこじんまりとしている。
 しかし、素朴ながらも温かみのあるこの建物に、フィーネはどこか親しみを感じていた。

 窓の外を見ると、目覚めた時に目に入った赤い花が咲き乱れている。部屋に空気を取り入れると、ふわっと華やかな甘い香りが部屋を満たした。

 魔の国と呼ばれ恐れられていたディザニアは、自然豊かで穏やかな場所だった。

 まだ庭にしか出たことなく、魔王とアンジェラ以外の魔族と会っていないフィーネだが、人間と戦争しているにしては、あまりにも穏やかすぎる雰囲気を感じとっていた。
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