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rena's room ☕ breaktime
第2章 Request1┈*★*┈唇に媚薬
* * *
「お疲れ様。葵」
「……」
「19時、待ち合わせ時間ぴったりね…
・・・ってどうしたの?」
シンプルなシフォンシャツに、黒のスキニー
ベージュのトレンチコートを羽織って
パンプスの音を鳴らして近付いてくる蘭を見たら
全身張っていた力が自然と抜けて、動けなくなった。
「……えっと、ごめんね。
夜桜を一緒に見たいなんて、我儘言って」
「……」
「仕事終わらないのに来てくれたってこと、よね?
そ、そりゃそうよね、年度初めで忙しいのに……」
突っ立ったまま会話しようとしねぇ俺の前で
だんだん不安そうな顔に変わる蘭。
……違う。
お前が言う我儘を
我儘と捉えたことなんて一度もない。
気遣う必要すら無い。
俺はお前に逢いたくて此処に来たんだ。
動けなくなって
話せねぇのは
─── 相変わらず、何度同じ場面を繰り返しても
‟ お疲れ様 ” の笑顔に
心が惹かれてどうしようもないから。