この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第24章 24 新薬の開発
薬師の陸慶明は、最近手に入れた異国の薬草の効果を自分で試してみていた。身体に害はないだろう。爽やかでスーッと抜ける清涼感を持つ香りがあたり一面に込められている。椀の中の薬湯の水面を眺め、ふうっと息を吐きだしてから一気に飲んだ。後味もすっきりとして悪くなかった。
「晶鈴……」
薬問屋の男から、薬草とともに胡晶鈴の名前が出てくるとは思わなかった。手紙一つよこさず、心配で彼女の故郷に人をやって探させたが帰っていなかった。薬問屋の話では彼女は故郷に向かっているということだが、気まぐれを起こさないとも限らない。また彼女に出会うことがあれば、手紙を書くように伝えてほしいと頼み、さらにどこにいたか、教えてほしいと二重に頼む。しかしこの広い国土で、一度見失えば砂の中の砂金のように見つけることが難しいだろう。
順調に出世し、経済的にも地位も安定してきた慶明は誰から見ても幸福に見える。物静かな才女である妻に、利発そうな跡取り息子。彼ほど恵まれた人物もそうそういないと一目置かれる存在だった。また慶明は、野心家ではあるものの、貪欲さはなく、気さくな人柄は人に不快感を抱かせることはなかった。努力と精進を怠らぬゆえの出世だと、周囲からも認められアンチは皆無だった。しかし彼の心が常に明るいわけではなかった。虚ろな母といなくなってしまった晶鈴のことが彼を重く沈ませている。
薬湯を飲んで横たわっていると、少しずつ気分が晴れやかになってくることを感じた。現実を生きていない母のことを考えると、いつもよりも苦痛も感じず、何とかなる気がし、晶鈴を想うとまたいつか巡り合えると楽観視できるようになった。
がばっと身体を起こし「やっと完成したのか」と転がっている椀を眺めた。
「いや、このまま2,3日様子を見よう」
調合を確認し、残りの材料を確かめる。十分な量ができるので大丈夫だと安心した。
「晶鈴……」
薬問屋の男から、薬草とともに胡晶鈴の名前が出てくるとは思わなかった。手紙一つよこさず、心配で彼女の故郷に人をやって探させたが帰っていなかった。薬問屋の話では彼女は故郷に向かっているということだが、気まぐれを起こさないとも限らない。また彼女に出会うことがあれば、手紙を書くように伝えてほしいと頼み、さらにどこにいたか、教えてほしいと二重に頼む。しかしこの広い国土で、一度見失えば砂の中の砂金のように見つけることが難しいだろう。
順調に出世し、経済的にも地位も安定してきた慶明は誰から見ても幸福に見える。物静かな才女である妻に、利発そうな跡取り息子。彼ほど恵まれた人物もそうそういないと一目置かれる存在だった。また慶明は、野心家ではあるものの、貪欲さはなく、気さくな人柄は人に不快感を抱かせることはなかった。努力と精進を怠らぬゆえの出世だと、周囲からも認められアンチは皆無だった。しかし彼の心が常に明るいわけではなかった。虚ろな母といなくなってしまった晶鈴のことが彼を重く沈ませている。
薬湯を飲んで横たわっていると、少しずつ気分が晴れやかになってくることを感じた。現実を生きていない母のことを考えると、いつもよりも苦痛も感じず、何とかなる気がし、晶鈴を想うとまたいつか巡り合えると楽観視できるようになった。
がばっと身体を起こし「やっと完成したのか」と転がっている椀を眺めた。
「いや、このまま2,3日様子を見よう」
調合を確認し、残りの材料を確かめる。十分な量ができるので大丈夫だと安心した。