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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第24章 24 新薬の開発
晶鈴の下女であった春衣が夕餉の支度ができたと慶明を呼びに来た。
「だんな様、今日はなんだか楽しそうですね」
「ん? そうか?」
「ええ、いつもより明るいです」
頬を染め嬉しそうに春衣が慶明を見つめる。慶明はすっと視線をそらし「早くいかねば、夫人と明樹が待ちくたびれてしまうな」と微笑み返した。
すでに食卓で待っている夫人の絹枝は息子の明樹をあやしていた。
「待たせてすまない」
「いえ」
静かに返答する夫人から、明樹を抱き上げ「よーしよーし」とあやす。明樹はキャッキャと明るい声上げ喜んだ。歩き始めた明樹は抱いてやらないとすぐにどこかへ行ってしまう。
「ほらほら、ちゃんと座りなさい。母上が困ってしまうよ」
優しく諭し、明樹を食卓に着かせる。並び始めた青菜に明樹は手を伸ばした。
「お前は、青菜が好きだな」
「あなたの香りに似ているのですよ」
いつもふわりと薬草のにおいが漂う慶明に夫人は静かにほほ笑んだ。
「そうかそうか。父上が好きか」
いつもより機嫌がやはり良いと春衣は慶明の様子を観察していた。慶明と絹枝と明樹の3人をみると、春衣は気持ちが暗くなってくる。彼女は主人である慶明に恋をしていた。彼の妻が晶鈴だったら、このような気持ちにはならないのにと唇をかむ。春衣にしてみると絹枝は新参者なのにさっとやってきて慶明の夫人の座に就いた感覚なのだ。
「わたしのほうが、先に出会っているのに……」
はっと思わずついた言葉に、慌てて周囲を見渡した。
「わたしは何を考えているのかしら……」
身の程をわきまえ、多くを望むつもりはないはずなのに、春衣は胸の奥のほうで何かどす黒いものがうごめている気がした。
「だんな様、今日はなんだか楽しそうですね」
「ん? そうか?」
「ええ、いつもより明るいです」
頬を染め嬉しそうに春衣が慶明を見つめる。慶明はすっと視線をそらし「早くいかねば、夫人と明樹が待ちくたびれてしまうな」と微笑み返した。
すでに食卓で待っている夫人の絹枝は息子の明樹をあやしていた。
「待たせてすまない」
「いえ」
静かに返答する夫人から、明樹を抱き上げ「よーしよーし」とあやす。明樹はキャッキャと明るい声上げ喜んだ。歩き始めた明樹は抱いてやらないとすぐにどこかへ行ってしまう。
「ほらほら、ちゃんと座りなさい。母上が困ってしまうよ」
優しく諭し、明樹を食卓に着かせる。並び始めた青菜に明樹は手を伸ばした。
「お前は、青菜が好きだな」
「あなたの香りに似ているのですよ」
いつもふわりと薬草のにおいが漂う慶明に夫人は静かにほほ笑んだ。
「そうかそうか。父上が好きか」
いつもより機嫌がやはり良いと春衣は慶明の様子を観察していた。慶明と絹枝と明樹の3人をみると、春衣は気持ちが暗くなってくる。彼女は主人である慶明に恋をしていた。彼の妻が晶鈴だったら、このような気持ちにはならないのにと唇をかむ。春衣にしてみると絹枝は新参者なのにさっとやってきて慶明の夫人の座に就いた感覚なのだ。
「わたしのほうが、先に出会っているのに……」
はっと思わずついた言葉に、慌てて周囲を見渡した。
「わたしは何を考えているのかしら……」
身の程をわきまえ、多くを望むつもりはないはずなのに、春衣は胸の奥のほうで何かどす黒いものがうごめている気がした。