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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第37章 37 星
 2人の性格の違いのおかげか、二卵性双生児のような育ち方をしているのに、兄妹げんかをすることはなかった。活動的な星羅に、静かな京樹が見守り役のようだった。

「さあ、帰ろう」
「そうね。今日は咖哩よ!」
「ん。さっきいい香りがしてた」
「かあさまの作る咖哩は最高ね」

 さっきまで熱心に勉強の話をしていたかと思うと、星羅はもう食事のことに目が向いている。恐らく入っているだろうスパイスの名前を羅列し始める。次から次へ好奇心を発揮するような彼女の姿は、京樹にはない感情なので見ていて楽しい。

「明々も帰りましょ」

 年老いて緩慢な動きをするロバの明々を小屋に入れると、空には一番星が輝いていた。

「今日も綺麗な星」
「ああ、そうだな」

 空を見ながら単純にきれいだと感想を言う星羅と違い、京樹は星の瞬きと色、見える位置を観察している。

「そろそろ僕は夜に太極府に行くようになるかもしれない」
「そうなの?」
「星は夜にみえるからね」
「そっかあ」

 学舎でまだ学生である星羅と違って、京樹はすでに占い師見習いとしての職を得ている。太極府の最高責任者である陳老師から、京樹を占い師として太極府へ来てほしいと言われたとき、彰浩も京湖も反対はしなかった。しかし占い師であった親友の胡晶鈴が、能力をなくして太極府を追われたことを知っているので不安だった。

陳老師が言うには、京樹は星読みとして知識と洞察力を要求されるため、能力をなくすことはないと教えられた。確かに突然、占えなくなるのは偶然性を使って占う卜術の占い師たちだった。それでも心から京樹の太極府入りを心から喜ぶことはできなかったようだ。

 京樹も、もちろん星羅も今は胡晶鈴のこと、京湖の出自やこれまでのことは理解していた。かといって何かをどうする事もできない。請われるまま、太極府で京樹は占星学に励んでいる。彼自身はこの仕事は自分に合っていると感じており、星を見ることは好きだった。

「空の星も、地の星も……」

 一番星と星羅を交互に見る。どちらも輝いていると京樹は心を温かくしていた。
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