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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第38章 38 想像
 星羅はまとめて結い上げた髪のリボンをほどき頭を振った。絹糸より滑らかで黒い豊かな髪の中に指を入れすっと梳く。満足した一日だったと、靴を脱いでごろっと寝台に横たわる。今日の歴史の授業はとても面白かった。

「絹枝老師の説明はとても分かりやすかったわ」

 学舎では星羅の母の友人である陸慶明の妻、絹江に学んでいる。彼女は物静かで理性的で穏やかな人である。授業に熱心な星羅をかわいがっていてくれた。
 学舎にきているのは王族や官僚の娘が多いが、彼女たちは親に入れられ適当に学問を修めているだけでやる気があるわけではなかった。向学心があるのは星羅などの庶民の娘であった。星羅は、陸慶明の推薦で学舎にいるので完全に庶民といった風でもなく、かといって官僚の娘でもなく微妙な位置にいる。そのせいか何組かある女子のグループには所属していなかった。そのおかげか、煩わされることなく勉学に励むことができている。

「特に逆境を好機に変えたことがすごかったな」

 高祖のエピソードを思い出し、星羅は胸がわくわくしている。

「わたしにもいつか大きな壁がやってくるかな」

 英雄譚はまだまだ星羅にとって夢物語のようだった。しかし星羅は二人の母と違う気質を育てていくことになる。
 育ての母、京湖が自分に降りかかったことを生みの母、胡晶鈴に起こると彼女はどうするだろうかと話したことがある。京湖曰く「晶鈴は受け入れる」とのことだ。私は逃げてしまったけど、と京湖は申し訳なさそうにつぶやいた。
 星羅は、相手の男に立ち向かい戦いたいと思ったが、それを京湖に伝えることはしなかった。
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