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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第40章 40 陸家
 賑やかなほうに目を向けると、陸家の長男、明樹が髪を振り乱し走ってこちらにやってきた。3つばかり年上の彼は、慶明によく似て背が高く、日焼けした肌は健康的だ。艶のある黒い髪はウエーブがかかっていて華やかに見える。

「お母さまただいま。やあ星羅」
「明樹さん幞頭はどうしたの?」

 髪をまとめ上げる赤い頭巾を懐から出し、「剣先が当たって破れちゃったんだ」と机に置いた。

「え? 剣先が頭に?」

 ぎょっとする絹枝に「実践じゃなくて型の稽古だから心配ないよ」と笑って手を振る。後ろに立っている渋い顔をした春衣にその頭巾を渡す。

「というわけで、縫っておいて」
「今はどうなさるんです? そんな好き放題の頭で」
「ん? これはこれで楽だからなあ」
「奥様からもおっしゃってください。身なりをもっときちんとする様にと」
「ああ、そうね。明樹さん、春衣の言うとおりになさい」
「へいへい。じゃ部屋に戻る。またな星羅」

 父の慶明も、母の絹枝も明樹にはあまり口やかましくないようで、彼は自由気ままに明るい性格をしている。使用人頭の春衣が一番熱心にあれやこれやと世話を焼いているのだ。
 口笛を吹きながら部屋に戻る明樹を、春衣が追いかけて去っていった。
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