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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第40章 40 陸家
 去っていく後姿をすこし眺めて、星羅は絹枝の持ってきた書物に目を走らせる。学舎の図書室は古代思想家の哲学書と歴史書しかなかったが、絹枝は兵法書を所持している。

「これは高祖がわかりやすく書き直したものなんですよね」
「ええ。こっちは写本だけど本書は王宮図書館にあるの。それはもう保管されるだけの代物ね」
「じゃあまた写させてもらいます」

 星羅は布袋から筆巻きと竹の書簡をとりだし机に広げる。

「墨はここにあるから」

 絹枝はことりと墨壺を机に乗せる。絹枝には庭を愛でる趣味はあまりないらしく、何の花が咲いているのかも知らない。勉強がしやすい環境が大事だった。今日は室内よりも屋外のほうが程よい気温で、湿度もあり筆を走らせるのによいと思っている。星羅が写している間、絹枝は授業の進め方について考察し、メモを残している。さらさらと筆が静かに進む音だけが流れる穏やかな時間だった。

 それを打ち破るような春衣の声が聞こえた。

「ぼっちゃま、おまちください!」
「ほっといてくれて平気だから」
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