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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第46章 46 男装の乙女
「ほら、こうだよ」

 京樹がふわっと星羅の髪を束ねまとめ上げる。くるくると器用に一つの団子にして頭巾で巻き後ろにあまりを垂らす。

「わあっ! さすが上手ね!」
「まあね」

 すっと立ち上がって星羅はくるっと一周回る。京湖が「なんだか素敵ね」と微笑むが、京樹が首をかしげている。

「京にい、変?」
「ちょっと男装になってないな、どこだろうか」

 2人で下から上まで見ていると京湖が「わかったわ」とすっと星羅の腰に手を置く。京樹と星羅を見比べて違いに気づいたようだ。

「この帯が男の人だとこの腰骨にくるようね」
「ほんと!」

 星羅も京湖もくびれた一番細いウエストに帯を巻いている。女性ならではの美しいS字ラインが出ていた。いつの間にかすっかり京湖の背丈を越して青年となった京樹は、紺色の着物だが直線的なラインを描く。
 星羅と京湖は明るい高い声をあげながら着物を直し始める。その様子をあまり見ることなく京樹は「じゃあ僕は寝るから」と部屋を出る。

「ありがとう。京にい」
「がんばって」

 いそいそと京樹は自分の部屋に戻った。簡素な部屋は寝台くらいしかなく眠るためだけの場所だった。いつもは眠る前に太極府で見ていた星の配置を眼に浮かべるが、今日は違った。
 今、結い上げてやった星羅の絹のような髪の手触りと、娘らしくなってきた身体の曲線を思い描く。年頃の娘なのに化粧っ気もなく、さらには男装して軍師見習いになってしまった妹。倒錯めいた色香を感じ、京樹は慌てて布団をかぶって目を閉じ眠ろうと努力した。
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