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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第61章 61 郭家にて
「この中のものどれでも好きなものを選べばいい」

 中を覗くと、上等な絹織物が詰まっている。軍師の家柄とあって色味は渋く、華やかさはないがシックだ。

「こんな綺麗な着物は見たことがないなあ」

 星羅はたとえ男物であっても、美しい着物にうっとりする。かすかに木の良い香りもする。触るのをためらっていると「ほら、これなんかは合うだろう」と郭蒼樹は、藍色の着物を出す。金糸と銀糸が織り込まれ、夜空の星がちりばめられたようだ。

「へえ。綺麗だなあ」
「着てみろよ」
「え、あ、ああ」

 きょろきょろする星羅に「どうかしたのか?」と郭蒼樹は尋ねる。

「いや、どこで着替えようかと」
「ここでいいだろ」
「ここ、か」
「なんだ」

 一番上の着物だけ脱いで羽織ればよいので、全裸になるわけではないが星羅はためらう。

「ちょっと向こう向いていてくれるか?」
「ああ、なんだ。恥ずかしいのか」

 特に気に掛けるわけでもなく郭蒼樹は星羅が言うように後ろ向きになる。星羅はさっと帯を解き、空色の着物を脱いでから、すぐに藍色の着物を羽織る。少し丈が長いようだが、一つ折り返して帯を締めれば大丈夫だろう。
 つづらの中におそろいのような帯があったので締める。今までで一番上等な着物をきた星羅は興奮する。
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