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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第64章 64 初恋
「自分が女だと告げたのか?」
「そんなことは言わない」
「抱き合っていただろう」

 ちょうど隆明がバランスを崩し、それを支えようとして転びそうになった星羅を反対に抱き上げた姿を、蒼樹は見ていたのだ。

「あ、あれは――」

 誤解だと状況を説明しようとするまえに、蒼樹は星羅を抱きしめた。

「な、なにを!」
「星雷。いや星羅、殿下だけはよすんだ」
「放して」
「放したくない」

 星羅は学問に加え、剣術も鍛錬していたのでそれなりに自分の力も自負していたが、蒼樹の抱きしめる力は強く、しかも背中と腰を押さえられ身動きがとれない。

「厩舎で会った時から、気になっていた。男なのに。自分がおかしいのかと思っていたが女だとわかって安心した」
「え……」

 初めて軍師省に行き、馬を停める場所を教えてくれたのはやはり蒼樹だった。

「いっそ、このまま……」

 するどい目で蒼樹に見つめられ、星羅は固まってしまった。蒼樹の顔が迫ってきて触れる僅か寸でのところで、星羅は自分の身体の拘束が緩んだことに気づく。そのすきをついて、星羅はさっと蒼樹から身体を離した。

「お願い蒼樹、やめて……」

 手の中から離れた不安そうな表情をする星羅をみて、蒼樹は冷静さを取り戻す。握ったこぶしで自分の額を叩き「すまなかった」とわびる。

「じゃ、これで」

 蒼樹の顔を見ないようにして、星羅は立ち去る。明日顔を合わせた時には、いつものように軍師見習いの仲間でいられるようにと願った。
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