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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第65章 65 思慕
 郭蒼樹との関わり方を心配したが、彼はいつも通り何も変わった様子がなかった。先日の出来事がまるで嘘のようだと、気構えていた星羅は拍子抜けしたが、安心もした。あらためて蒼樹を感情に左右されない人物だと思う。今回のことで彼は尊敬の対象となったが、星羅の心は王太子の曹隆明に向かっている。蒼樹が言ったように、女性として慕って報われるなどと思っていない。よい策を出し、国を発展させ、忠臣であることで星羅は隆明に尽くしたいと思っている。

 休日、星羅は久しぶりに遠乗りにやってきた。馬の優々も家と軍師省の往復に飽きていたのか、いつもと違う道を嬉しそうに駆ける。人気のない山道を走り見晴らしの良い高台に上がる。柔らかい下草に優々は喜んで顔を埋めている。

「今日はのんびりしよう」

 いつもの軍師省の男装をとき、今日の星羅は髪もおろし、いつもの娘姿で草むらに寝転んだ。高く澄んだ青い空を見ていると隆明の顔が浮かぶ。

「殿下……」

 同時にクールな蒼樹の「放したくない」といった言葉を耳の奥で感じる。頭と心がぐちゃぐちゃし始めたころ、遠くから馬の嘶きが聞こえたので身体を起こした。優々も聞こえたらしく星羅のそばにすり寄ってきた。
 優々の首筋を撫でながら馬の嘶きのほうに目を向けていると、数名の男たちが馬を走らせてやってきた。その中に見紛うことのない曹隆明がいる。隆明も星羅に気づいたらしく、馬の頭を引き返しこちらへとやってきた。

「星雷か?」
「殿下……」

 隆明が不思議そうな顔をするのも当然だった。いつもの男装と違う娘の姿だからだ。星羅はハッとして「あの、わたしは本当は……」と言いかけ口をつぐむ。何と言ったらいいかわからなかった。
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