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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第65章 65 思慕
「遠乗りに来ていたのか?」

 優しく尋ねる隆明に「はい」と返事をするだけで精一杯だった。

「少しこの者と話があるので、そなたたちはあちらを見てきてほしい」

 どうやら隆明は狩りに来ていたようで、護衛のものも弓矢を持っている。いつも優美な着物姿から、胸当てなどの装備を身に着けた隆明は凛々しく頼もしい。

「久しぶりに狩りに来たら、かわいらしい小鹿に会ったな」
「小鹿……」

 子供にしか見られていないと思うと星羅は辛くて泣きそうになった。

「どうした。そなたはいつも元気なのに」

 もう自分の娘だとわかっている隆明は、思わず星羅を優しく抱きしめる。

「なにか辛いことがあれば言うがよい」

 蒼樹の力のこもった拘束力のある抱擁と違って、隆明の懐は柔らかく温かい。

「殿下、殿下、わたしはあの、あなたをお慕い申してます」

 やっとの思いで自分の気持ちを告げると隆明は「嬉しく思う」と星羅の髪を撫でた。そして身体を離し、自分のまとめ上げた髪から一房、するっと手に取り星羅の目の前に差し出す。

「殿下?」

 一房の髪と隆明を見比べる。そっと触れた髪の毛に星羅は驚き、そして自分の頭にさっと指を入れ髪を梳いた。

「そなたは晶鈴にとてもよく似ている」
「あ、ま、まさか」
「しっ。それ以上は言ってはならぬ」

 隆明は優しくも悲しい目をする。
 言葉を発することも、隆明から視線を外すこともできずに、星羅は立ちすくむ。再び、馬の嘶きが聞こえる。一周回ってきた護衛たちが帰ってきたのだろう。隆明はさっと星羅から距離をとり、身体の向きを変えた。

「また軍師省で会おう」

 星羅の言葉を待たずに、隆明は馬にまたがり護衛の者たちと立ち去った。その後姿を星羅は立ち尽くしたまま見ることしかできなかった。
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