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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第78章 78 臨月
「わたしはかあさまのようには出来ないなあ」

 椅子に腰かけ、腹を撫でながらつぶやいていると京湖が「なあに?」と星羅の両肩にふわりと手を乗せる。

「ん。わたしにはかあさまみたいに家を整えるのが無理だなって」
「ふふふっ。星羅は私にできないことがいっぱいできるじゃない。家事は誰かにしてもらえばいいわよ」
「そうねえ」
「明樹さんもあなたに家事してほしいなんて言わないでしょう」

 確かに明樹は星羅に家庭の中のことをきちんとしてほしいなどと望まない。彼の母、絹枝が家事をほとんどしたことがないが、教師として尊敬される人物であることも大きかった。

「星羅が軍師よりも家のことに魅力を感じたら、そうなさいな」

 花のように笑う京湖につられて星羅も笑った。京湖は星羅の腹のまえで屈み、耳を当てる。

「何か聞こえる?」
「ええ、力強い鼓動が聞こえるわ。ほら、おばあさまよ。蹴ってごらんなさい」
「やだあ、かあさまったら。あ、いたっ。ほんとに蹴ってきた」
「元気ねえ」

 心から実の孫が生まれると思っているのだろう。京湖は愛しそうに星羅の腹を撫で微笑んでいる。優しい時間はまるで春の陽気のようだ。思わずいつまでも子供のままで京湖に甘えていたいと願ってしまっていた。
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