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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第85章 85 西の駐屯地
 西国に隣接する駐屯地では、気候も温暖でからっと晴れる日が多く、飢饉の懸念が中央よりも薄い。都から、倹約と備蓄をいつも以上に心がけるべしと通達が来たが、表面的に命令を守るだけで危惧するものは少なかった。

 陸明樹の妻、星羅からの手紙には今回の冷夏は曹王朝最大の国難となるだろうと書かれてあった。珍しく不安な様子の手紙に、明樹は他の兵士に比べ状況を重く見ている。

「もうすぐ帰るからな」

 明樹の任期はもうひと月で終る。星羅と息子の徳樹にもう少しだと自分の中で言い聞かせながら日々、職務に励んでいた。ところが来週任期が明けるというところで、後輩の部下から誘いがかかる。

「兄貴。来週には都に帰るんでしょ? 今のうちに遊びに行っておきませんか?」
「遊び? 妓楼なら興味ない」
「相変わらずですねえ。せっかく西国の女と遊べるってのに」
「俺はいいよ」
「まあまあそういわずに、美味い咖哩も食べられるって評判なんですぜ?」
「咖哩?」
「病み付きになるらしいっすね。おれ食べたことないんすよ」
「ふーん。咖哩か。じゃあまあ日の高いうちになら行ってもいいか」
「そう来なくっちゃ」

 後輩が熱心に誘うので、この駐屯地での最後の娯楽と思い出かけることにした。
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