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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第86章 86 行方不明
もうじき夫が帰ってくると星羅は、国難のさなか明るい気持ちでいた。陸家でも、珍しく絹枝が溌溂としている。
「やっと帰ってくるのね。徳樹も貴晶もすっかり大きくなったわね」
「貴晶さんは徳樹を弟のようにかわいがってくれますね。寝かしつけも上手で」
「ええ。今きっと一緒になって眠りこけてると思うわ」
亡き陸慶明の側室、春衣が生んだ貴晶は5歳になっている。貴晶には春衣のことを話してはおらず、絹枝が実母として彼を養育している。
家事も育児も不得意な絹枝は、明樹の育児にはほとんど乳母に任せたようだが貴晶のことは自分で面倒を見ているようだ。
「貴晶はほんとうに利口な子でね。利発な春衣によく似ているわ」
「お義父上にも似てますし、お義母上の養育もいいんだと思います」
「そう? だといいわねえ」
絹枝は教師として多くの女学生を導いてきたおかげか、実の子でない貴晶を疎んじることなく、その才を認め育てている。
「あの、こんなこと聞くとちょっとどうかと思うけど……」
「なんでしょうか」
「星羅さんは、実のお母さまが恋しくはないのかしら?」
「うーん。恋しいとは思ったことがないです。京湖かあさまがいてくれたから」
「そうなのね。いえね。いつかは貴晶に母親のことを話さねばと思うんだけど、知ったら私のことを嫌になったりするかしらね。ほら、実の母親じゃないくせに母親面するなとか……」
絹枝はこれからの貴晶との母子関係を心配しているようだ。
「大丈夫ですよ。わたしは京湖かあさまを心から母だと思っています。晶鈴かあさまも勿論母だと思ってますけど。そういえば子供のころに兄が、星羅にはかあさまが二人いるねって言ってくれました」
「なるほどねえ」
複雑な生い立ちの星羅の想いにしみじみと絹枝は感じ入っていた。
「やっと帰ってくるのね。徳樹も貴晶もすっかり大きくなったわね」
「貴晶さんは徳樹を弟のようにかわいがってくれますね。寝かしつけも上手で」
「ええ。今きっと一緒になって眠りこけてると思うわ」
亡き陸慶明の側室、春衣が生んだ貴晶は5歳になっている。貴晶には春衣のことを話してはおらず、絹枝が実母として彼を養育している。
家事も育児も不得意な絹枝は、明樹の育児にはほとんど乳母に任せたようだが貴晶のことは自分で面倒を見ているようだ。
「貴晶はほんとうに利口な子でね。利発な春衣によく似ているわ」
「お義父上にも似てますし、お義母上の養育もいいんだと思います」
「そう? だといいわねえ」
絹枝は教師として多くの女学生を導いてきたおかげか、実の子でない貴晶を疎んじることなく、その才を認め育てている。
「あの、こんなこと聞くとちょっとどうかと思うけど……」
「なんでしょうか」
「星羅さんは、実のお母さまが恋しくはないのかしら?」
「うーん。恋しいとは思ったことがないです。京湖かあさまがいてくれたから」
「そうなのね。いえね。いつかは貴晶に母親のことを話さねばと思うんだけど、知ったら私のことを嫌になったりするかしらね。ほら、実の母親じゃないくせに母親面するなとか……」
絹枝はこれからの貴晶との母子関係を心配しているようだ。
「大丈夫ですよ。わたしは京湖かあさまを心から母だと思っています。晶鈴かあさまも勿論母だと思ってますけど。そういえば子供のころに兄が、星羅にはかあさまが二人いるねって言ってくれました」
「なるほどねえ」
複雑な生い立ちの星羅の想いにしみじみと絹枝は感じ入っていた。