この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第87章 87 旅路
馬を走らせ星羅はまっすぐに明樹の駐屯地を目指す。旅の供は馬の世話係の許仲典だ。
「星羅さん! 次の宿で休まねばだめだ」
「もう? もう少し行けないか?」
「無理だ。馬がもう走れねえ」
「そうか……」
「んだ」
許仲典の言うとおりにして、宿屋に泊ることにした。
――星羅は夫の明樹を探しに行くために、軍師省に休職願を出す。叶わねば辞職も覚悟の上だった。誰もいい顔をしなかったが、決心の堅い星羅に大軍師、馬秀永は西へ向かうことを許可した。唯一、星羅を煙たがっている柳紅美だけは、喜んでいた。
「退職になっても構いません。また試験を受けますし」
「わーっはっは。最高点でも更新する気か?」
教官の孫公弘が豪快に笑う。
「俺がついて行ってやりたいが」
「おいおい。軍師省から二人も抜けられると困るだろう。ただでさえ少数精鋭なのに」
郭蒼樹の言葉には孫公弘は青ざめる。
「残念だ。しかし一人ではだめだ。誰か、連れていけ。そうだ、許仲典がいいだろう」
「許仲典さん? 馬係の?」
「ああ、そりゃいい。そうしろ」
許仲典の一族は元々、高祖に仕える将軍の家系だった。忠臣だった一族は、国が平和に落ち着くにつれ、自分たちの役割も終わりだと悟り中央から退いていく。気性ものんびりとしており、野心もない許家の過去の栄光を知るものは郭家など、もう一部のみだった。
許仲典の忠義心といざというときの武力、そして馬を知り尽くしている彼は星羅の供にぴったりだ。彼に、星羅の供の話をすると二つ返事で快諾した。許仲典は主君を得たと拱手し、初めて鋭い目を見せた。
「星羅さん! 次の宿で休まねばだめだ」
「もう? もう少し行けないか?」
「無理だ。馬がもう走れねえ」
「そうか……」
「んだ」
許仲典の言うとおりにして、宿屋に泊ることにした。
――星羅は夫の明樹を探しに行くために、軍師省に休職願を出す。叶わねば辞職も覚悟の上だった。誰もいい顔をしなかったが、決心の堅い星羅に大軍師、馬秀永は西へ向かうことを許可した。唯一、星羅を煙たがっている柳紅美だけは、喜んでいた。
「退職になっても構いません。また試験を受けますし」
「わーっはっは。最高点でも更新する気か?」
教官の孫公弘が豪快に笑う。
「俺がついて行ってやりたいが」
「おいおい。軍師省から二人も抜けられると困るだろう。ただでさえ少数精鋭なのに」
郭蒼樹の言葉には孫公弘は青ざめる。
「残念だ。しかし一人ではだめだ。誰か、連れていけ。そうだ、許仲典がいいだろう」
「許仲典さん? 馬係の?」
「ああ、そりゃいい。そうしろ」
許仲典の一族は元々、高祖に仕える将軍の家系だった。忠臣だった一族は、国が平和に落ち着くにつれ、自分たちの役割も終わりだと悟り中央から退いていく。気性ものんびりとしており、野心もない許家の過去の栄光を知るものは郭家など、もう一部のみだった。
許仲典の忠義心といざというときの武力、そして馬を知り尽くしている彼は星羅の供にぴったりだ。彼に、星羅の供の話をすると二つ返事で快諾した。許仲典は主君を得たと拱手し、初めて鋭い目を見せた。